『適格者』同士が戦う、という氷鉋の言葉に、生徒会のメンバーは顔を見合わせた。
「何のために? って聞いた方がいいんでしょうか?」
「……。それは。決闘の手段として?」
本人としてはこれ以上ないほどに考えて語彙を選んだらしいのだが、それでもニュアンスを伝える適切な言葉が出てこなかったらしい氷鉋はなぜか疑問形で答えた。
「……けっとー…?」
「それ」の最初は黒姫を呼び出す校内放送だったのかもしれない。
本来なら、緊急時でもないのに一教師を呼び出すことに校内放送を使うことは少ないだろう。命に関わるような急病人が出た時の保険医や、(本来あってはならないが)何事か生徒が不祥事を起こした時の校長でもなければ、授業中に全校放送で呼び出されることなどまず無いに違いない。
『黒姫先生、至急校長室へおいでください。黒姫先生…』
お約束のチャイムに続いて続けられた間の抜けた全校放送の内容に、ちょうど二年某クラスで教鞭を振るっていた黒姫本人は噴出し、教室に苦笑いを振りまきながら自習を指示することになった。まさか教員になってからも校長室へ(それも全校放送で)呼び出されるハメになろうとは。夕方の職員会議で何を言われるか、今から胃の痛い話でもある。
ほぼ予想通り校長室にいたのは校長ではなく、理事長の方だった。当の校長は理事長に野暮用でも押し付けられたに違いない。
平和な学園生活が脅かされている…正しくは『脅かされそうになってきている』という事態であることを考慮した上で、沙織は溜息と共にいろいろと開き直ることにした。どこかのえらい学者先生も言っていたではないか。エライ学者先生だってわからないことにははっきり「わからない」と言うものだ。
呆気に取られた表情に困った顔で返され、沙織はますます事態を飲み込めなくなった。
「あーーーえーーー。その。まずは全快オメデトウゴザイマス?」
氷鉋が動けるようになった、と生徒会室へ来て見れば、傷跡もなく全快している本人が居ることに、半ば驚けなくなっている自分がいるという事実が微妙な気分である。それでも目の前の氷鉋が、あの怪我から六日目にして痕も残さず回復したという事実は純粋に良いことではないか。それに、どうせこの後続けて驚くことがあるのだろうと、妙な感が働くようになっているあたりで、すっかり沙織も染まっている。疑問系なのがせめてもの抵抗、というところだろうか。何に対する抵抗なのかは謎だが。
「この時間は、生きにくいか」
「解からない。物事の基準…この時間における『普通』というものが俺には理解できないことがまだ多い」
黒姫の問を自分の中でもう一度問い直し、それから、改めてぼそりと答える。
「それは、あの飛騨という『金色』に対しても同じだ」
「……そうか」
どうするかな、と黒姫が口の中でつぶやくのを聞いて氷鉋は視線を戻した。
「あんたはどうなんだ。この場所は、居ずらくはないのか…その…、あんたは、時間と空間を飛んだだろう」
沙織を仕留めるはずだった刃の二本は空間に唐突に染み出した黒姫の腕に刺さったはずだった。体格がいいとはいえ、五日で治る様な傷ではないはずだ。傷は癒えていないだろうが、文字通り『大した』怪我ではないのだろうか。
「あ? …まぁ、な」
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